声の『バリエーション』

今回はテーマを『声』に絞ってお話をします。

突然ですが、みなさんはどれくらい『声のバリエーション』を持っていますか?

あまり意識したことがないかもしれませんが、この『声のバリエーション』をたくさん持つことは、子どもとの関わりにおいて、とても重要だと私は考えています。

声で『演じる』

子どもの教育、子育てにおいて、教えたり、伝えたり、褒めたり、叱ったりと、さまざまな場面に遭遇すると思います。その都度、適切な言葉を選ぶことが大切ですが、その効果をさらに倍増させてくれるのが『声の使い分け=バリエーション』です。

例えば、子どもに静かにしてほしい時。すごく大きな声で「静かにしなさい!」とつい叱ってしまいがちですが、これはあまり望ましくありません。反対に、ジェスチャーを交えながらものすごく小さな声で「静かに」と伝えるように心がけます。

こうすることで、「先生も小さな声にしているから、本当に静かにしなきゃいけないんだ」と子どもは感じます。

大きな声で叱ると、「先生だって大きい声だから、別に静かにしなくてもいいんだ」と思ってしまいます。子どもは非常に素直なので、これでは逆効果です。

こうした『声の大小』だけでなく、たくさんの使い分けを意識してみてください。

高い声⇔低い声、速い声⇔遅い声、嬉しい声⇔悲しい声、優しい声⇔怖い声、キレイな声⇔汚い声、ふざけた声⇔まじめな声etc…

挙げればキリがないですが、適切に使い分けることによって、非常に効果的になります。

これは、声を使って『演じる』ということです。子どもに何かを伝えたいときには、声を使い分けてうまく演じてみましょう。

しかし、ここで一つ注意点があります。それは、「中途半端では効果がないこと」「大げさすぎると真意が伝わらなくなること」です。

例えば、「嬉しい声⇔悲しい声」で考えてみます。

〔嬉しい1 2 3 4 5普通6 7 8 9 10 悲しい〕

こんなグラフがあったとします。普段の声が5だとして、悲しさを伝えたいときに6くらいのレベルで伝えても、あまり効果がありません。 反対に、10のレベルだと、大げさすぎて子どもが引いてしまったり、驚いてしまったり、「本当にそう思っている?」と疑われてしまうことだってあります。 (演劇とかで、演技が大きすぎて内容が入ってこない事ありませんか・・・?)

なので、適切なレベルとしては、控えめすぎず、大げさすぎず、「嬉しい3」「悲しい8」くらいを意識して演じてみてください。ポイントは、「演じるけど、あくまで自然体で!」です!

『声のバリエーション』を意識した音楽活動

次に、音楽の活動での『声のバリエーション』について考えてみます。

私は普段の授業で、子どもの「表現力」「演技力」を引き出せるように意識して活動しています。その一つが『声のバリエーション』です。

授業の初めに必ず行う『返事の模唱』の活動では、メロディに乗せて「大きな声で♪」「小さな声で♪」「悲しい声で♪」など、20種類以上あるバリエーションをランダムに出して行なっています(画像参照)。

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また、童謡などでも、ピアノ伴奏を速くしたり、遅くしたり、悲しくしたり、元気な感じにしたりすると、生徒も変化を楽しみながら声を変えて歌っています。

初めは戸惑っていた生徒もいましたが、慣れてくると本当にうまく声を使い分けて歌っているなという印象です。こうしてさまざまな声のバリエーションで歌っていくと、こちらが「こう歌いましょう」と指導しなくても、だんだんと曲を聴くだけで、音楽の雰囲気に合わせた歌い方ができるようになっていきます。

最近では、『発声法』を幼児期から指導して歌わせる園などもよく見受けられますが、私が何よりも重視しているのが『バリエーション』なのです。

そして一番大事なのは、子どもが「楽しい!」と思えること。

子どもって、いろいろな声で歌うのが本当に好きです。その変化をものすごく楽しんで歌います。あと、ふざけて歌うのが大好きですよね。ふざけて歌うのも、立派な表現方法だと私は考えています。

もしみんながふざけてしまっていたら、反対に「かっこいい声」「まじめな声」「真剣な声」は出せる?と問います。こんな感じで、「真逆の歌い方」をさせていくと、どんどん多様な表現力が身についていきます。キレイな声で歌ってほしいなと思ったら、「汚い声」も身につけると、どんどんキレイに歌えるようになっていきますよ!

さらに、音楽の授業で表現の楽しさが身につくと、人前で話したり、発表したり、コミュニケーションが円滑になるなど、別の場面でも力が発揮できるようになっていきます。

その場その場で、適した声が出せるようになれば、思いも伝わりやすくなります。

明日から是非、『声のバリエーション』を意識して生活してみてください!